ホテル・旅館の予約キャンセル問題とは?悪質なノーショーを防ぐ対策も解説

「団体客の予約を受けたのに、当日誰も来なかった」......そんな困った事態が、近年注目されています。
ニュースで聞くことも増えてきた「予約キャンセル問題」は、ホテル・旅館などの宿泊業界、ブライダル業界、飲食業界など、さまざまな業種にとって深刻な問題です。
悪質な予約キャンセルを防ぐには、どうしたら良いのでしょうか? 今回は、宿泊業界と予約キャンセル問題との関連や、とるべき対策について解説します。
目次
予約キャンセル問題とは?
旅行や外食の予定を立てていたけれど、急用ができたり体調を崩したりして、行けなくなってしまった......。そういった理由で予約をキャンセルすることは、誰にでも起こりえます。
やむを得ない事情であれば、ホテルやお店側も「仕方ない」と思えるケースも多いものです。
でも、キャンセルの理由や連絡の有無によっては、「許せない」と感じるケースもあるでしょう。
今回とりあげる「悪質な予約キャンセル」とは、たとえば次のようなものです。
◆悪質な予約キャンセルの例
- 複数のホテルを同日予約し、キャンセルの連絡をしない
- 団体予約を入れ、当日になっても来ない
- 施設側からの電話やメールを無視する
- 規定のキャンセル料を支払おうとしない など
いくつか、具体的な例を挙げてみましょう。
■CASE1
忘年会の時期、飲食店に数十名の団体予約が入り、貸切状態として対応した。店側は机や椅子の配置を変えて団体が使えるように準備し、コース料理を人数分調理して待ったが、当日誰も来なかった。
■CASE2
複数のホテル・旅館に、同一人物から同日の団体予約が入った。どの施設にもキャンセルの連絡はなく、全ての施設が宿泊準備を整えていたが、客は現れず。人件費や食材をはじめ、当日の損害額の合計は数百万円を超えた。
■CASE3
旅行のためにリゾートホテルを予約する際、数名が参加未定の状態だったが、「人気のホテルなので早めに押さえておきたい」と、余分な人数まで予約した。結局何人かは来られないことになり、当日になってキャンセルした。
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これらのケースは、いずれも実際にあった例を元にしたものです。
顧客側には、悪意があることもあれば、「もしものための仮押さえ」といった軽い気持ちで行うこともあります。
悪意のいたずらであるケースはもちろん、言語道断です。しかし、「友人のため」という、ある意味善意からであっても、施設側にとっては大きな損害を出してしまう行為が、直前キャンセルや無断キャンセルなのです。
予約キャンセルは大問題!損害の具体例
基本的に客室数以上の売上を立てることができない宿泊業界にとって、他の顧客が見込めない当日のキャンセルは痛手です。
このため、現状ホテル業界では、直前のキャンセル等にキャンセル料を設定している施設がほとんどです。しかし、回収の手間や未払いのリスクも考えると、ダメージはゼロではありません。
予約キャンセルによる損害には、具体的には次のようなものが考えられます。
◆予約キャンセルによる損害の具体例
- 本来発生するはずだった宿泊料金、飲食代などの損失
- 人件費、光熱費等の経費
- 食材等の廃棄コスト
- 機会損失(他のお客様を受け入れられないため)
主な損害だけでも、上記のものが考えられます。
とくに、キャンセルの連絡がない無断キャンセルは、宿泊業界や飲食業界では「No Show(ノーショー)」と呼ばれ、悪質な行為と見なされています。
施設側はお客様が来るつもりで、人員を揃え、部屋や食事の準備をして待っています。仮に他のお客様から来店や予約の希望が入ったとしても、お断りせざるを得ません。
この機会損失は、前もってキャンセルの連絡が入っていれば、ある程度防ぐことができるでしょう。
でも「ノーショー(無断キャンセル)」の場合、当日になっても「来る」という前提で予約客を待つ必要があるため、本当に泊まりたいお客様にお部屋を提供できず、かつ空室ができてしまう......という、頭の痛い状況が生まれます。
予約キャンセル問題への対策は?
ホテル・旅館にとって、できるかぎり避けたい「ノーショー」や予約キャンセル。では、悪質な予約キャンセルを防ぐ方法はあるのでしょうか?
まずは基本的な対策から
「この対策をとれば100%防げる」という方法は、残念ながら存在しません。ただし、悪質な予約キャンセルをできるだけ回避するための方法は、いくつかあります。
まずは、以下のような基本的な対策から整えていくことが大切です。
◆悪質な予約キャンセルを防ぐ基本対策
- キャンセル料の規定について、予約時に分かりやすく提示する
- 予約客の連絡先(とくに携帯電話番号)を把握しておく
- 連絡先に実際に連絡がつくかどうか確認しておく
- 予約日の数日前〜前日にリマインドする(予約意志の確認)
また、「キャンセルの連絡を入れたいのに、電話が繋がりにくい」といった事態を避けることも大切です。
24時間電話対応を行うことができなくても、「リマインドのメールやSMS(ショートメール)を送る際、キャンセルページへのリンクを設置しておく」という方法もあります。
事前・クレカ決済やデポジットは有効だが、リスクもある
事前決済、クレジットカード決済、預り金(デポジット)といった制度を導入するのも、ひとつの手です。
これらのシステムは、キャンセル料の未払いを防げるだけでなく、「とりあえず予約しておこう」といったキャンセルリスクの高い予約を避けることにも繋がります。
ただし、事前決済や預り金のシステムは、キャンセルしやすい顧客だけでなく、優良な顧客にも敬遠されやすいというリスクがあります。
やはり予約する側としては、体調不良や天候不良などで直前になってキャンセルする可能性も「ゼロではない」という思いがあるためです。
事前決済や預り金の導入を検討する際は、そうしたリスクも含めしっかり考慮する必要があるでしょう。
また、最近では「行けなくなった人」から「行きたい人」へ宿泊予約を売買できるサービスなども登場しています。
宿泊業界全体として、大きな課題となっている「予約キャンセル問題」。可能な限りの対策をとりつつ、新しいサービスの登場にも注目していきたいですね。